『超』高級車の日本での販売戦略

超高級車

こんにちは、ロッソです。

今回も前回の記事『超』高級車って何?に引き続き、『超』高級車について考えてみたいと思います。

前回の記事を読んでいない方のため、重複しますが、何故わたしが『超』高級車に興味を持ったかについて簡単にお伝えすると、

 

  • 先日目にした新聞記事の中で、「超高級車販売 5年で国内3倍」という記事があった。
  • その記事における超高級車の定義は、「販売価格2,000万円以上」とのこと。
  • 主要な輸入高級車メーカーとして、「ポルシェ、マセラティ、フェラーリ、ランボルギーニ、ベントレー、アストンマーティン、ロールス・ロイス、マクラーレン」の8社を挙げていた。

 

という内容だったからでした。

実際、感覚的にも増えていると感じる『超』高級車ですが、何故こんなにも急激に増えているか興味が湧きます。

そこで今回は、超高級車と呼ばれる自動車メーカーが、どのような戦略で日本市場で成長しているかについて考えてみたいと思います。

目次

「優等生」ポルシェの戦略

まずは、日本で順調に売り上げを伸ばしているポルシェから。

ポルシェはここ数年、連続で新車販売台数の記録を更新し続けています。

例えば、

2014年 5,385台

2015年 6,690台

2016年 6,887台

2017年 6,923台

2018年 7,166台

といったように、5年で2,000台近く増えています。

この飛躍の理由は様々だと思いますが、わたしが考える一番の理由は、

 

『裾野を広げた事』

 

に尽きるかと。

今回の新聞記事において、『超』高級車として名を連ねているポルシェですが、2,000万円以上の車ばかり販売しているかというと、そうでもありません。

各車種のグレードによっては、車両本体価格が1,000万円を切る車もあるため、実際的には「超高級車も売っているけど、それ以下の車も多い」といったところでしょうか。

もともとポルシェは「スポーツカー専業」ではありましたが、それは少し昔の話。

逆に、専業であったからこそ、経営不振が噂された時代もありました。

超高級車を購入できる人々は、いわゆる『超』富裕層の方々ばかりですので、人数に限りがあります。

限りがあるだけに、一度そっぽを向かれてしまうと、一気に経営が傾く恐れがありますよね。

そこでポルシェは、低価格帯のボクスターやケイマンなどを次々に投入し、ファンを幅広い層から集める事にしたのです。

更に、人気のSUVに目をつけ「SUVなのにスポーツカーっぽい」という、新たな分野を切り開いたことで、多くのファンを獲得できたのでしょう。

一度購入してもらい、ポルシェの良さを実感すれば、その顧客は更に高額なポルシェに乗りたくなる・・・。

こうした好循環を、長い時間をかけて作り上げた結果、現在の販売台数増加に繋がっているのでしょうね。

実はポルシェも真似ている

では、こうした戦略を考え出したのがポルシェが初めてかというと、そうではありません。

 

こうした戦略を積極的に行っているのが、「メルセデス」「BMW」です。

 

この2社は、超高級車も販売していますし、昔は高級車の代名詞的なメーカーでしたが、近年は幅広い層のファンがいるメーカーに変貌しました。

実際、日本での販売台数もかなり多く、メルセデスで言えば、2018年の販売台数がレクサスを超えています。

ここでも「一度メルセデスのファンになれば、買い替え時は、更に上のメルセデスに乗り換える」といった好循環が生まれているようです。

しかし、メルセデスとBMWはこの戦略が当たったこともあり、次々と車種を投入し過ぎたため「コモディティ化(個性の喪失)」してしまい、以前よりも「高級車っぽくなくなった」などと言われることも・・・。

どこに重きを置くかで変わりますが、ポルシェもあまりやり過ぎると、今までのファンが離れていく可能性もありますね。

ここでお気づきの方もいると思いますが、「メルセデス」「BMW」「ポルシェ」と、この全てがドイツメーカーです。

こう考えると、こうした戦略というのはドイツ人が好む方法なのかもしれません。

実際それが当たっていることを思えば、ドイツ人は「経営感覚」が優れているといえるでしょう。

マセラティもポルシェに追随

このポルシェの戦略を、いち早く取り入れたのがマセラティです。

マセラティは、ギブリ(という低価格帯の車)を投入したことで販売台数が上昇し、次にレヴァンテ(というSUV)を投入したことで、更なる飛躍がありました。

実際、ここ数年のマセラティの販売台数の増加は、目覚ましいものがあります。

今後、他の超高級車メーカーも、この流れに乗っていく可能性は高いと思います。

マセラティの誤算

しかし、マセラティもポルシェのように順調かというとそうではありません。

マセラティの日本での販売台数は、

2013年 491台

2014年 1,407台

2015年 1,449台

2016年 1,323台

2017年 1,824台

2018年 1,453台

と、2014年、2017年の大幅な増加を除き、実質は1,400台程度でウロウロしている感が強いのです。

恐らく2014年はギブリ、2017年はレヴァンテを投入し、一時期急激に販売台数が増えたものの、その次の一手がないために、また元通りになったといったところでしょう。

ポルシェのような、開発力の高さとスピード感があれば、このような結果にならなかったかもしれません。

更に言えば、一気に店舗数を増やしたのは良いのですが、人材の育成が追いついていない面も否めません

いくら店舗数や販売台数を増やしたとしても、高級車はその後のメンテナンスが重要です。せっかくファンが増えても、対応の不備により、「あぁ、もうマセラティはいいや」なんて事にもなってしまいますよね。

 

また『超』富裕層と呼ばれる人々は、「希少性」を重要視する傾向があります。

 

一気に販売台数が増え、希少性が低下すると、超富裕層の人々はそのブランドから離れてしまう可能性が高まります。

この点は、他のメーカーも危惧しているようで、実際わたしが読んだ新聞記事の中でも、

モデル増で複数の市場に訴求しつつ、1モデルあたりの台数を抑えて希少性も維持する。

と答えているメーカーもあります。

実際ポルシェも、長期的な視野をもって日本市場で成長しています。短期的に成長すると、その反動もキツイですからね。

イタリア人特有の「楽観性」も大切ですが、ドイツ人特有の「忍耐力」があればさらに良い・・・と言ったところでしょうか。

イタリアメーカーの「こだわり」

ただ、手放しにポルシェが良いかと言うとそうでもありません。

「超」高級車なんて聞けば、とてもラグジュアリー感があるように思いますよね。

実際、これらのメーカーのほとんどが、ハイエンドの装備を用意しています。

 

しかしポルシェはと言うと、・・・何と言いますか・・・。

いえ、ポルシェファンの皆さん、悪気はないんですよ。わたしもポルシェは好きなんです。

ただ・・・、合理的と言ったら良いんでしょうか?

 

例えば、ポルシェを買いに行きます。すると、ポルシェには驚くほどの数のオプションが・・・。

「えっ?こんなものまでオプションなの?」

なんて事が結構あります。正直に言えば、「高級車だったら、それくらい標準にしてよ」と(笑)。

うーん・・・、よく言えば「イチから組み立てる喜び」は実感できるでしょうね。

メカ好きの男性なら、ポルシェのこういった部分が楽しくてたまらないかもしれません。

まぁ、商売として考えれば、「上手だなぁ~」とは思います。

セーターを買いに行っただけなのに、店員さんから「これはバランスが重要なので」なんて色んなことを言われ、お店を出たら、コートから靴まで一式揃えてしまうみたいな(笑)。

 

そこへいくと、フェラーリやマセラティなどのイタリア車は、そういった面倒くささはなく、とにかくラグジュアリー感の創出に力を注ぐ傾向があります。

ボディーカラーや、レザーシートの質感など、徹底した「モノづくり」へのこだわりを感じることが出来ます。

もちろんオプションも沢山ありますが、わかりやすく言えば、「標準シートでも十分満足できる」と言ったところ。

そう考えると、女性の方がイタリア車に向いているかもしれません。

 

「モノづくり」に関して言えば、日本人も負けていないと思いますが、イタリア人の「こだわり」とは大きく異なります。

日本人は「安くて良いものを」ですが、イタリア人は「高くても良いから、とことん良いものを」という想いを強く感じます。

どちらが正解などとは言えませんが、どういった方が、どちらを好むかというのはあるかもしれませんよね。

まとめ

如何でしたでしょうか?

 

こうしてまとめてみると、いかにドイツ企業が戦略的かがわかります。

 

多くの「超」高級車メーカーのほとんどが、一時期倒産しかけていますが、ドイツ企業が親会社になることにより、目覚ましい復活を遂げています。

マセラティも表面的な真似だけじゃなく、なんとか頑張ってほしいところです。

ドイツの長期的な視点を取り入れつつ、イタリアの「こだわり」は忘れずに。